「No Smoking」と「Smoke Free」──どっちも禁煙?
最近、日本でも喫煙できる場所がだいぶ少なくなってきましたね。
愛煙家の皆さんは大変でしょうけど、煙の苦手な私には非常に助かっています。煙の苦手な人も多いので、これからも分煙よろしくお願いします(*_ _)ペコリ
ところで、禁煙といえば、日本では「No Smoking」と書かれているのをよく見かけますよね。
ところが、海外では「Smoke Free」という表記を目にすることが多いんです。実際に海外に行ったときに、「あれ?No Smokingじゃないの?」と戸惑った人もいるのではないでしょうか。
実は私もその一人で、初めて「Smoke Free」の看板を見たとき、「喫煙は自由です」と勘違いしてしまいました(笑)。一瞬、「あ、ここ喫煙所なんだ」と思ってしまったんです。
喫煙者でなくて本当に良かったと心から思いました(汗)。
もちろん、”Smoke Free” の本当の意味は「禁煙」です。
でも、よく考えてみると、「Smoke(喫煙)」+「Free(自由)」で、なぜ「禁煙」になるのでしょうか?
直訳すると、まるで「喫煙自由」ともとれそうなのに、実際の意味はまったく逆なんです。
今回はこの「Smoke Free」という表現の意味と、その背景について少し考えてみたいと思います。
Smoke Freeはなぜ「禁煙」?
「自由」という言葉は、明治時代に「free」の翻訳語として生まれたあたらしい表現です。この自由という言葉は、古い中国の言葉「自由自在」から取られたものだと言われています。
この漢字の原義は、「自らに由(よ)る」といった意味で、そのため「自らの意思のままに振舞う」という意味に解釈されていきました。
この訳語が与えられたことで、日本では「free」という言葉は、主に「自由気まま」「自由勝手」という意味として受け止められていきました。
しかし、英語の「free」の意味をOxford Learner’s Dictionaryで調べてみると。。。
1.not under the control or in the power of somebody else
(誰かの支配下にないこと)2.not restricted or controlled by anyone else
(誰にも制限・統制されていないこと)
と説明されています。
1も2も「制限されていない」ということを強調した説明になっています。
このOxford Learner’s Dictionaryの説明は、日本語の自由自在の意味とは、少し異なる解釈を示していると言えます。同じ「自由」を説明していても力点の置き方に違いがあることに気付かれたでしょうか?
つまり、日本語では、自分が自由に振舞うということを述べているのに対し、英語では、誰からも制限されていないということを述べているのです。
日本語で「自由」というときは、自分が意のままに振舞えるという「行為の主体」を中心にして自由の意味を考えていますが、一方の英語の「free」は、拘束するもの、制限するものがないという「外部の条件や状況」を説明しています。
つまり、日本語は「行為の主体」に、英語は「外部の条件」に焦点を当てて言葉の意味を解釈しているということです。
「Smoke Free」=「煙から解放された」
さて、本題の「Smoke Free」に戻りましょう。
この表現は、実は「〇〇-free」という形で英語では広く使われています。
たとえば:
- Fat Free(無脂肪)
- Sugar Free(砂糖無添加)
- Duty Free / Tax Free(免税)
これらの表現は、英語の「free」の原義から派生した用法です。
この「free」の意味は、「xxxによって制限されない、邪魔されない」という意味で、英語の本来のfreeの意味から考えれば自然と出てくる用法だといえます。
脂肪(fat)や砂糖(sugar)に邪魔されない、つまり、それらを気にしなくて済む、ということで「無脂肪」や「砂糖無添加」という意味になります。また、税金(duty、tax)から解放されているということで、「免税」という意味になります。
だから、Smoke Freeの場合も、「煙に邪魔されない」、つまり、この場所は煙という余計なものから解放されています、という意味になるんです。
このように、「Smoke Free」が「喫煙自由」とは正反対の意味になる背景には、「free」という言葉に対する英語と日本語の感覚の違いがあるのです。
「自由」という言葉の意味の違い
英語の free は、日本語の「自由」が持つ「気ままに振る舞う」「勝手に行動する」といった意味とは、そもそもの出発点が異なります。
欧米社会で「自由(freedom)」と言うとき、それは「誰からの支配や制限も受けないこと」という意識がまず初めにあり、それが「自分たちが勝ち取ってきた権利だ」という価値観にもつながっています。
一方、日本語で「自由」と言うと、「わがまま」や「身勝手」といったネガティブなニュアンスがつきまとうことがありますよね。これは、「自由」を“自分がどう振る舞うか”という「行為の主体」に焦点を当てて理解しているからかもしれません。
同じ「自由」という言葉でも、文化や歴史の背景が異なれば、そこに込められた意味や受け取られ方も大きく変わるのです。
……と、禁煙の話からずいぶん話が広がってしまいましたね。
(* ̄ー ̄)y-~~~~~~フゥ~(※もちろん、煙は出ていません)
でも、英語を学ぶというのは、単に単語や文法を覚えることではなく、その言葉の背景にある価値観や世界の捉え方を知ることでもあります。
英語に興味を持ったら、ぜひその「言葉の奥」にある文化や思想にも目を向けてみてくださいね。
ちなみに、この記事は……Responsibility-Free です(笑)。