【映画ぴ評】The Founder (2016) – マクドナルド創業者の物語

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The Founder (2016)

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

annual revenue: 年間売上
persistence: 執念、根気
standout: 目立つ
capital: 資本
mortgage: 抵当に入れる
renegotiate: 再交渉する
lousy: 気に食わない
real estate: 不動産
purview: 権限

Review

The Stealer?

 マクドナルドの“創業者?”レイ・クロックの物語。

 何気なく見始めたこの映画、正直めちゃくちゃ面白かった!

 現在のマクドナルドが、実は本当の創業者であるマクドナルド兄弟から、経営権を半ば“だまし取る”ような形でスタートしたという話を、どこかで聞いたことがあった。でも、こんなにもえげつない話だったとは思っていなかった。

 映画は、レイ・クロックがどのようにしてマクドナルド兄弟からビジネスを乗っ取っていくかを描く。タイトルの『The Founder』は、実に皮肉が効いている。

 強欲で野心家、自己中心的ながら精力的で行動力に満ちたレイ・クロックを、マイケル・キートンが見事に演じている。

Persistence——執念が宗教になるとき

 「企業経営者にはサイコパスが多い」———よく言われることだが、レイ・クロックはまさにその典型のような人物。自分の利益や目的のためなら手段を選ばず、どんな犠牲も厭わない。築いた人間関係さえ、目的の前では切り捨てる。

 彼を突き動かしているものは何なのか?そのヒントとなるのが、劇中で繰り返し語られる言葉
———“Persistence”(固執・執念)

 「何があっても諦めない」という強烈な意志。それが彼の核にある。レイ・クロックの生き方は、周囲の感情や立場をまったく顧みず、ただ目的に突き進む。しかも罪悪感など微塵も感じていない。むしろ、自分は“使命”を背負った者だと信じ、仕事に燃えている。

 だからこそ、彼の姿は見る者によって全く異なる印象を与える。ある人には、冷酷で自己中心的なサイコパスのように映るし、別の人には、情熱的で信念に満ちた経営者に見える。
(日本にもこういうタイプの経営者、たくさんいる気がする。誰とは言わないけど…)

 実際、著名な経営者には、自己愛が強く、情熱的で、社交的——でも話してみると、他人を「手段」として見ることに一切ためらいを持たない人が少なくない。…これって偏見だろうか?🤨

 レイ・クロックにとっての“Persistence”は、もはや宗教的な信念のように見える。彼は、資本主義という名の“宗教”に心酔し、「社会的地位」や「経済的成功」といった価値観を絶対視する。その信仰のためなら、どんな犠牲も厭わない。

 そんな彼に対し、前の妻が言う言葉が象徴的だ。

“When enough is gonna be enough for you?”
いつになったら満足するの?

 彼の返答は、こうだ。

“Probably never.”
おそらく、決して満足することはない。

 この一言に、レイ・クロックという人間の本質が詰まっている。

The Father of Fast Food——兄弟の悲劇

 一方、マクドナルド兄弟は、スコットランド系の職人気質。資本主義的な拡大路線には懐疑的で、あくまで「良いものを効率よく提供する」という理想に基づいて、画期的なシステム=ファストフードを生み出した。

 最初はレイ・クロックの提案に乗り気だったものの、彼の拡大志向と強引な手法に、次第についていけなくなる。だが、気づいたときには手遅れ。

 彼らの悔恨のセリフが胸を打つ。

“There is a wolf in the hen house. We let him in.”
鶏小屋に狼がいる。しかも俺たちが入れてしまったんだ。

 まさに、「軒を貸して母屋を取られる」そのもの。

 最終的に兄弟は経営権を売却し、自分たちが始めた最初の店舗をThe Big Mと名を変えて再出発を図るが、その目の前にレイ・クロックがマクドナルドの直営店を建てるという冷酷さ。

 ——そこまでする?

 結局、兄弟は客を奪われ、閉店に追い込まれる。そして、レイ・クロックが交渉時に約束していた「売上の1%のロイヤリティ」も、結局一度も支払われなかった。

 レイ・クロックの“創業”を支えた人々の多くは、その後、彼の元を離れていく。

総評:魅力的な怪物

 精力的で狂気じみた人物像は、観ていて本当に面白い。映画としての題材は最高。ただし、絶対に身近にはいてほしくない(笑)。

 この作品を観て改めて思ったのは、やはり「経営者には人の痛みに鈍感な人が多いのではないか?」ということ。成功の裏に潜む人間ドラマと、資本主義の光と闇——それをここまで赤裸々に描いた作品は、なかなかない。

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